「日本オオカミ協会」からのメッセージ
伊豆の森と人とオオカミ
 

 数年前、伊豆の森林と自然保護に関する講演を聞く機会がありました。演者は「スギやヒノキの人工林が生物多様性を低下させ、沿岸の海藻群落の生育をも邪魔しているので、自然林の復元が大切だ」と教えてくれました。納得でした。でも、この先生はオオカミの復活は伊豆半島では無理があるともお話になりました。これについては納得できませんでした。その理由ははっきりお話になりませんでした。私の憶測ですが、「オオカミが人を襲うとしたら、伊豆の人口は多いし、どこにも人の暮らしがある。だからオオカミとの共存は無理」とお考えだったのでしょう。でも、明治初めまでオオカミは伊豆半島に生息していたのです。最後の記録は、西天城の牛の県営牧場での出来事でした。オオカミの攻撃を恐れて番人がいたと記録にあります。しかし、この牧場はすぐに閉鎖されました。オオカミの攻撃はありませんでした。理由は、地形が悪くて放牧牛が骨折するなど、事故が続出したからなのです。
 ところで、伊豆半島の人口は、減少続きの現在よりも明治時代の方が二倍以上も多かったのです。伊豆の開発は古く、荘園時代から奥山まで人が住んでいたので、人手の入っていない原生林は伊豆半島にはほとんど残っていないのです。それでもオオカミと人々は平和に共存してきたのです。
          
             「日本オオカミ協会」代表 丸山直樹

 
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