伊豆ユネスコクラブ会長就任にあたり
南伊豆の町会議員であり、一次産業に従事している黒田利貴男です。
UNESCO、国際連合教育科学文化機関の日本における民間の推進団体群の一つである伊豆ユネスコクラブ(IS UNESCO CLUB)の会長を本年度からお引き受けしました。
私が常々考えている事は、「生命は他の生命を糧にしなければ生きてゆけない宿命を背負っている」という現実を踏まえて、ここ数年のコロナ渦にあってもめげずに、自然環境の負の遺産を背負いながら未来の日本を背負い、日々成長していく逞しい子供たちが置かれている厳しい状況です。
また、自然に恵まれてはいるという肯定的な一面の影で、過疎化や観光客の減少などを生み、明るい未来像が描けていない故郷の現状と今後を少しでも前向きな発想と行動力で捉えて、よりよく生きる力を育む機会を作ることです。竹馬の友たちと足並みを揃え、持続可能な社会を、先ずは地元から、伊豆圏へ、そして全国へ広げてゆきたいと思います。
食物連鎖の頂点にある人間以外の生命体は、種を保存してゆくために「必要最低限」の捕食しかしません。言い換えれば、持続可能な生命圏の完全な守護者です。
しかし、人間はどうでしょうか。大半の日本人は生きてゆく上に必須の食料を生産者に依存し、その生産の苦労を知ることなく”商品”として工業製品と同様に金銭を介して手に入れるが故に、総生産量の30%以上の「もったいない」フードロスを出しているという悲しい現実があります。
私は、山川草木、森里川海や共生動物と供に、人間や他の生命体と調和した『里山』という自然に近い世界で生きてきました。勿論、必要最低限の食料や工業製品を商品として買い求め消費もしていますが、自然の恵みへの感謝は尽きません。
しかし、近年、過度な利便性への依存から、「里山」が放置され、それに連動して動植物の生息域が変化し、動植物と人間の折り合いが悪くなっています。
昨今、温暖化問題を筆頭に、地球環境の危機を憂い、UNESCOが中心となり、国際的な連帯責任を促す『SDGs(持続可能な開発目標)』を掲げた運動に注目を集めていますが、範囲が広く目標が多岐に渡り、全てを理解し実行するには一般市民である我々には障壁が高すぎる面があるように感じています。
ところで、皆さんは覚えているでしょうか。2004年に環境保護を訴えノーベル平和賞を受賞したケニア人女性であるワンガリ・マータイ女史を。彼女は日本の伝統的文化である節約、工夫に注目し、日本語の「もったいない」を具体的な事例を示して世界の共通語にし、それを強く提唱し実践しましたが、時間の経過とともに風化しつつあります。
私は、彼女の「もったいない運動」を今一度、75億近い人類が理解できるSDGsの理念の本意であり手段として捉え、「もったいない運動」をこそが、SDGsの目標達成の最適な手段だと確信しています。
皆さんもご存じの通り、先進諸国が出すフードロスを無くせば、世界の飢餓に苦しむ8億人を救え、毎年2000万人以上の餓死者を失くせます。私たち日本人が一人でも多く「もったいない」という人間本来の価値観を取り戻して生きてゆく運動を、身近な生活の中で展開し、それを全国に、アジアに、世界に広げてゆきたいと思います。
そのために、私は伊豆ユネスコクラブの会長をお引き受けし、「もったいない運動」を、先ずは伊豆半島から全国に訴え、日本から世界へ「もったいない運動」を広げてゆきたいと存じます。それが、結果として、基礎科学に始まり応用技術に広がり、子供たちや多くの市民の理解を深め、結果的に「SGDs」、持続可能な開発目標の達成の一助となること信じています。
最後に、自然は人間の利己主義により破壊する対象ではなく、人間は自然の一部であるという事実を再認識し、自然と人間がともに助け合い、「共生」してこそ地球、そして生命が持続してゆけると考えていますので、ぜひ、皆さんの力を集結して、伊豆から全国に、そして世界に向けた活動や発信をして行きたいと思います。
コロナ渦による消極的な価値転換の結果であるバーチャル化、ネット化に満足せず、この機に飛躍的に進んでいる技術革新を上手く利用し、身近な「もったいない」の対象である「食料の生産・流通・消費」、「少子高齢化や過疎化による里山の崩壊に起因する生態系」などなど数え上げれば限がありませんが、先ずは身近な暮らしの中での「もったいない」を無くし、健全な地方自治のあり方改革、産学官の協調の在り方を模索するだけではなく、即決断、即行動する会にしてゆきましょう。
2022年1月 黒田利貴男